この百合web漫画がすごい!2016
この記事は、百合 Advent Calendar 2015 12日目の記事です。
タイトルが「2016」なのは元ネタ仕様。
去年に引き続き今年読んだweb漫画からオススメ作品を勝手にピックアップしてみました。いろんなものをパクリスペクトした企画です。
「これ百合漫画だ!」という判断基準は管理人の独断と偏見によりますのであらかじめご了承ください。
前回はランキング形式でしたが、一口に「百合漫画」と言ってもジャンルは多種多様、それらを統一してランク付けするのは難しい……という管理人の都合により今回はランキングなしのカテゴリ別ピックアップ形式にしています。
「青春部門」「日常部門」「リアル部門」「ファンタジー部門」から各2作品、計8作品を選んでみました。カテゴリ分けは管理人基準なので、各公式サイトの記述とは異なる場合があります。
またこれらとは別に、「百合って呼ぶと大いに異論がありそうだけどこういう作品で百合を感じることもあるよね」という作品などをピックアップした特集を設けております。
なお、Pixivや個人サイトの作品は除外しています。そちらは後日気が向いたら……(去年も言ってた)
対象:2014年12月~2015年11月頃にweb掲載された漫画
連載については連載期間のほとんどが2015年内であれば対象としています
<青春部門>
主に学園を舞台とした、中学生~高校生くらいが主人公の漫画。恋愛描写の比重は作品ごとに大きく異なる。シリアスで切ない話が好きな人向け。
『黒い白鳥』吉谷光平/春(ジャンプ+)2015/07/05
一瞬の輝きで人々を魅了する美のスポーツ、「飛び込み」。
全国トップクラスの飛び込み選手・さおりは、真っ白な肌で美しく飛ぶ自分を「白鳥」と誇っていた。
そんな彼女は、技術も美しさも自分に及ばない友人・アッコのことを見下していたが……。
「えっ『ジャンプ』で百合?」と驚いた方もいるかもしれません。『ジャンプ』の特色である少年漫画の王道要素、これを少女二人の関係の中で見事に描き切った作品です。
「白」と「黒」のコントラストの鮮やかさ、そして飛び込みシーンを中心とした大胆な構図が、読む人を圧倒しながらも惹きつけます。読めば読むほど王道少年漫画、そして百合。
「白と黒の2人の少女を巡る意地と輝きと友情の行方。」という公式紹介文には、いち漫画好きとしても百合好きとしても、魅了されないわけにはいきませんでした。
『ななしのアステリズム』小林キナ(ガンガンONLINE)2015/06/25~
主人公・白鳥が親友二人に隠しているのは、三人の友情を壊しかねない恋心。
だから私は、この気持ちを隠し続ける――そう誓っていた矢先、思いがけない光景に出くわして知ってしまった、好きな人の「秘密」とは……!?
去年のランキングでもご紹介した話題作『ななしのアステリズム』が今年6月から連載スタート。「次にくるマンガ大賞」にもノミネートされた、今一番注目されているweb漫画のひとつです。
読み切り(内容は連載第1話と同じです)時点から切ない展開が人気だった本作ですが、連載版はさらに続きが気になって仕方ない展開の連続です。特に現在最新公開中の第7話!そうきたか!
ネタバレになるので多くは語れませんが、様々な要因で揺れ動き迷いながらも「自分の気持ち」と向き合い大切にしようとする白鳥たちの姿は、切なくも魅力的に輝いています。
<日常部門>
女の子たちの日常生活をテーマにしている漫画。公式での恋愛描写はないものが多い。ほのぼのした話が好きな人向け。
『オンリー☆ユー ~あなたと私の二人ぼっち計画~』めきめき(@vitamin)2015/05/13~
この春から女子高に入学し、薔薇色の新生活への期待に胸を膨らませる女の子・都島知多子。しかし入学早々、対人能力が低い「ひとりぼっち特待生」に認定されてしまった彼女は、初対面の女の子・城東よしやと「5m以上離れられない共同生活」を送ることに……!?
まずこの設定を女の子同士でやってくれたことに賞賛と感謝の意を表したいです。
知多子もよしやも「ひとりぼっち特待生」だけあって自分の行動に自信が持てず、何か起こるたび相手に嫌われたんじゃないかと心配してばかり。ふたりとも過去には友達関係でつらい出来事もあった様子。
そんなふたりが心の距離を縮めていく様子を、可愛らしくハートフルに描いた作品です。果たして、よしやが知多子の名前を直接呼ぶ日はいつ訪れるのか……!?
9月で更新が止まっていますが、来年には単行本の予定もあるようなので今後の展開に期待!
『星屑ネバーランドガーデン』木野咲カズラ(@vitamin)2015/03/21~
人見知りな性格の女の子・弓月は高校入学を機に豪華な女子寮で念願のひとり暮らしをスタート!……するはずだったのに、手違いにより廃寮寸前・相部屋前提の「永遠(ネバーランド)寮」へ入ることに。
人見知りに加えてとある「秘密」を抱えた弓月は、無事に寮生活を送ることができるのか!?
初めて親元を離れての生活、古びた女子寮、そして個性豊かな寮生たち。時に迷い悩みつつも、ゆるやかでマイペースな交流を通して成長していく弓月と周囲の子たちの姿には、ほっと心が温まります。
百合的なポイントとしては、新しく出会った一年生ふたりは勿論、二年生・三年生コンビがそれぞれ相部屋で、お互いがお互いの良き理解者であることも見逃せません。三年生コンビがカップル扱いされて(モブの子に)「妄想が捗る~♡」なんて言われてるシーンもあったり。
登場人物ひとりひとりに優しさと愛を感じる、安心して読めるほのぼの日常漫画です。
<リアル部門>
現実社会寄りの描写が中心の漫画。恋愛描写は多め。社会人・大人の百合好き向け。
『おいしいかおり』ウオズミアミ(マッグガーデンコミックオンライン)2014/11/25~2015/09/25
おいしいかおり/ウオズミアミ - マッグガーデンコミックオンライン
薫と朔のふたりは、同棲生活を始めて一か月になったばかりの女性カップル。いつもハイテンションな薫と怒りっぽい性格の朔は、騒がしくも幸せな日々を過ごしていた。
そんな暮らしを彩るのが、薫の得意なスパイス料理――さあ、おいしいかおりを召し上がれ!
リアル寄りの百合作品には「レズビアン」がテーマの一部となっているものがありますが、この作品もそのひとつ。第8話では、薫の母の来訪からカムアウトを巡る問題に切りこんでいます。
一方、毎話登場する様々なスパイスと料理は、作品全体にあたたかさをもたらしています。料理と物語との絡ませ方も自然で、料理漫画としても楽しめる。登場する料理はなんとレシピつきです。
ふたりの生活は甘々で時々スパイシー。まさにほどよくスパイスの効いた作品です。
現在web上では第1話のみ公開中ですが、単行本発売済みなので気になった方はそちらから!
『ときめく気分』ssamba(comico)2014/12/11~
才色兼備で噂の絶えない経営学部のクイーン・由紀と、ごく普通の大学生・リア。同じ学部に所属しているものの特に関わりがなく、まるで違う世界の人だと思っていたふたりが、思いもよらぬきっかけで知り合うことになり……。
2014年末からほぼ毎週連載を続け現在50話を迎えた長編漫画。由紀とリアが出会うところから始まり、お互いのことを知りながら仲を深めていく様子が丁寧に描かれています。
そして気になる現在のふたりの関係は…………最初の数話で雰囲気が合うと感じたら、とりあえず27話まで読んでください!そして39話まで読んでください!期待を裏切らない展開が待っているはず。
100話前後を予定しているというストーリーはまだ折り返し地点。これからの展開が楽しみです!
一部に男性との恋愛描写が含まれるので、苦手な方は念のためご注意ください。
<ファンタジー部門>
ファンタジーの要素を主題として取り入れた漫画。
『みわくのあくま』もけお(クロフネ百)2015/03/19~
悪魔に憑りつかれたせいであらゆる生き物からモテモテの女の子・世志子ちゃん。素朴で健気な女の子・純もまた彼女に惹かれ、思い切って告白するものの、「悪魔のせい」だからと一蹴されてしまう。
そこで純が取った行動は――「悪魔がいなくなったら、この気持ちが本当かどうかわかるじゃろ?」
とにかく世界観がハチャメチャです。理不尽なくらいモテモテになってしまった世志子ちゃんは、学校ではひっきりなしに告白され、街を歩けば園児に囲まれ、川沿いを歩けば鯉が群がる。これが可愛さ大爆発の絵柄やハイテンション・ハイテンポな展開と見事にマッチしています。
そして物語の主軸は、「本当の気持ち」を確かめようとする純ちゃんと、次第に心を開いていく世志子ちゃんとのハートフルな交流。その健気で一生懸命な姿に、自然とふたりを応援したくなります。
一度ハマればたちまちやみつきになる、不思議な魅力のある作品です。
『花落としのいつか』浅見ヒッポ(アルファポリス)2015/03/27~2015/05/22
身体に花を咲かせる体質の人間、「花人」。中学二年生の知香は、気弱で苛められがちな「花人」の親友・麻佑子の世話を焼きつつも、彼女の「花」と笑顔をきれいだと思っていた。
しかし、ある出来事をきっかけに、麻佑子の「花」とふたりの関係に異変が……。
王道な青春ものに「花人」というファンタジー要素を違和感なく取り入れた作品。思春期の女の子たちの不安定さが、「花」を通した巧みな描写の中で現れています。
「『麻佑子の花』が好きで、少し嫌い」だという知香、そんな彼女が初めて「麻佑子の花」の咲く様子を間近に見て思うこと、そして「麻佑子の花」が咲く理由……細やかな表現が形作る繊細なストーリーは、言葉にするのももどかしく切なく、しかし最後には晴れ晴れとした爽やかさを感じさせてくれます。
この世界観でもっとお話が読みたい!と思わせてくれる、友情百合好きにオススメの漫画です。
<特集1:これ百合?部門>
「百合」という概念が広く知られるに従って、「ある作品が百合かどうか」が議論になる機会も増えてきたように思います。最近だと某映画放送後のTLが「百合だ」「百合じゃない」で埋まってたり……。
ということで、この部門では「百合漫画と呼ぶと大いに異論がありそう(でも百合を感じる人はゼロじゃないはず)」な2作品をピックアップしました。なお管理人は百合を感じてしまった側です。
「憎らしくて、でも憧れていた彼女」「私の心に爪跡を残した彼女」「あるときにふと思い出すであろう彼女のこと」みたいな感覚にどうしようもなく「百合」を感じてしまうめんどくさい人向け。
敢えて紹介文は付けていませんので、読んだままに感じて頂ければ!
これも管理人主観ですが、百合かどうかはともかく、漫画としての面白さは確かだと思います。
『ファムファタルと昼食を』藤沢もやし(第1回ハツキス新人マンガ賞:大賞)2015/02/27
『エロチカ』あいうちしほ(第25回イブニング新人賞:優秀賞)2015/03/04
<特集2:百合×グルメ部門>
昨今の漫画界は空前のグルメブームを迎えています。多分。
主人公が料理をする漫画は勿論ですが、「ひとり飯」や「食べ歩き」をテーマにした、所謂「食マンガ」が流行しているのも興味深いところ。「食べること」自体が注目されていると言っても良いでしょう。
ならば、百合でグルメな漫画にも、大いに需要があるのではないか!?
ということでこの部門では、女の子の「ふたり飯」な漫画を1作品ご紹介します。
『買い食いハラペコラ』藤こよみ(月刊のアクション)2015/05/27~
放課後ふたりで何食べる? 一緒に食べるともっと美味しい!
食いしん坊な女子高生・あーこ&トンちゃんの放課後買い食い食べ歩きのお話。
美味しいものを美味しそうに食べる女の子の可愛らしさが作品全体にあふれています。気心知れたふたりのテンポの良いやり取り、そして清々しいほどの食べっぷりは、読んでいるだけでも気持ちが良いものです。言わずもがなですが、深夜以外に読むのがオススメ。
……ところでこの二人、どういう経緯で知り合ったんでしょうね。制服も違うし、食いしん坊なことを除けばタイプも違うし、私服で会うのは10話目が初めてで……?
という、百合的に妄想捗るポイントも備えた(?)、楽しい「ふたり飯」漫画です。
web連載開始時から話題だった人気作『ストレッチ』がついに最終話を迎えたのが今年の8月6日。ちょうど昨日(12月11日)には最終巻となる第4巻が発売されました。
連載の終了自体は非常に惜しまれるところですが、web連載という形式の漫画が約二年間に渡って継続し、そして単行本も発売されたという点については喜ばしいことと言えるでしょう。
去年の記事では「百合漫画の長期連載の少なさ」について少し触れましたが、今年は『ななしのアステリズム』や(厳密には去年ですが)『ときめく気分』、紹介しきれなかったものでは『マーメイド・ラヴァーズ』や『少女決戦オルギア』のように、web上での長期連載が期待される作品が続々と登場しました。『姫のためなら死ねる』や『篠崎さん気をオタしかに!』はすでに三年以上の連載を継続中。「百合web漫画」という形式自体が広く認知され、Twitter等で話題になることも増えてきました。
今後もこの勢いに乗って、新しい百合web漫画が誕生することに期待しつつ、管理人も微力ながら応援していきたいと思います。
来年も良き百合web漫画に出会えますように!